無 門 関  第六



第六 世尊拈花

世尊、昔、霊山会上に在って、花を拈じて衆に示す。
この時、衆皆黙然たり。ただ迦葉尊者のみ破顔微笑す。



世尊云わく、
吾れに正法眼蔵、涅槃妙心、実相無相、微妙の法門あり。
不立文字、教外別伝なり。摩訶迦葉に府属す。


 

無 門 関  第七



第七 趙州洗鉢 (和訳)

ある時、僧が趙州に尋ねた、
「 私はこの道場に入ったばかりの新米でございます。
ひとつ尊いお示しを頂きたいと思います。」



すると趙州が言われた、「 朝飯はすんだかい。」
僧が言った。「 はい、頂きました。」
そこで趙州が言われた、「 それでは茶碗を洗っておきなさい。」
僧は、いっぺんに悟ってしまった。



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無 門 関  第八



第八 奚仲造車 (和訳)

ある時、月庵和尚に僧が尋ねた、
「 奚仲という人は、百台もの車を造ったといい、
しかもまた車の両輪も車軸も取り外してしまったと聞きますが、
いったい彼はそれによって如何なる真理を明らかにしたのでしょうか。」



無門は言う、
「 もしも直ちにそれを分かることが出来るならば、
その眼力の早さたるや流れ星のようだし、
そのハタラキの素早さも稲妻のようであるに違いない。」



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無 門 関  第九



第九 大通智勝 (和訳)

ある時、興陽の清譲和尚に僧が尋ねた。
『 大通智勝佛というは十劫という長い間ずーっと道場で
坐禅を続けておられるのに、いまだもって仏法は現れず、
仏道を完成しえないでおられるということですが、
これはいったいどういうことでしょうか。』



すると清譲和尚が答えて言われた、
『 なかなか的を射た質問だな。』
僧が言った、
『 道場に坐っているにもかかわらずどうして仏になれないのですか。』
清譲和尚は言われた、『 そもそも彼は仏にならないからだ。』



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無 門 関  第十



第十 清税孤貧 (和訳)

曹山和尚に対して清税が問うた。
『 私は独り者で、そして至極貧乏である。どうぞ、何か頂きたい。』
と申し出た。曹山和尚は言った。

『 清税さん 』 清税が 『 はい 』 と答えると、
曹山和尚は 『 あんたは禅というシナで名代の一級酒を
腹一杯十分に飲んでいながら、まだ一滴も頂きませんとは、
何を言いなさる 』 と。

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